2-3章で、「過去を振り返ることで、未来の新しい差別化戦略が見えてくる」と述べましたが、
これはなかなか簡単なことではありません。
2-4章で振り返った3つの項目をまず考えてみます。

・なぜその商品を作らなければならなかったのか。
・なぜその商品を扱うことになったのか。
・なぜそのサービスを行うことになったのか。

そして、

・なぜその商品をこれからも作らなければならないのか。その理由と具体的方法。
・なぜその商品をこれからも扱わなければならないのか。その理由と具体的方法。
・なぜそのサービスをこれからも行わなければならないのか。その理由と具体的方法…。

これらを突き詰めて考えていくと、はっきり意識していなかった考えがはっきりしてくることがよくあります。
「べつにその商品を扱わなくても構わなかった。こんな目的さえ達成できれば良かった。」
「特にそのサービスを永久的に続けるつもりではなく、続けてもあと数年かな・・・」
「本当はもっと新しいサービスをやってみたいんだが・・・」
「実は社名を変更しようかと悩んでいたんだが、この際・・・」

日頃、ほとんど事業計画について時間をかけることはなかったのではないでしょうか。
忙しいとつい日常業務に没頭してしまいがちなのです。

会社案内をつくるということは、広報担当者が適当に“会社概要”をつくるのとは本来違うべきものだと、私は思うのですが。真剣にその作業を進めていくと、やはり社長の事業に対する過去のいきさつと今後の展望を聞き出して初めて見えてくるものです。

そしてそれが、「お客様にとってどういう意味があるのか」を考えることこそ、他社との差別化と言う意味においての市場戦略が見えてくるのではないでしょうか。

バブルの頃に「CI」という言葉が流行しました。
デザイナーである私にとって、「流行」で終わってしまったことははなはだ遺憾ではあるのですが、現象としてはまさに「流行」でした。本来のCIは、その企業が今後どう言った方向に進んでいくのかを考え、戦略を見直し、再編するためのプログラムを意味します。
“Corporate Identity”の略であり、企業のアイデンティティを確立すること、です。

ブームの中でも、真面目に取り組んだ企業はたくさんあります。
しかしこのプログラムの多くは中~大企業であり、たくさんの社員を含む委員会の合同作業的に進められていきました。社内改革的要素が多かったと感じます。
時代は順風満帆のバブル期。
社長の牽引力より社内の調和が求められていました。

しかし、激動期の今こそ、「我が社はどうあるべきか」、「今後我が社はどう進んでいくべきなのか」
本当の意味でのCIを、リーダーである社長自らが考え、実行していかなければいけないのではないでしょうか。
会社案内を作る上での大切なプロセスは、実は会社を運営する上での大切なプロセスでもあるのです。